泳げない僕と世界一おいしいホットケーキ

小学生の頃、プールの時間が大嫌いだった。

うまく泳げなかったから、お腹痛いとか言って仮病で休んだりした。プールサイドに座り、楽しそうにしてるみんなが羨ましかった。


そんな小学生の僕が海水浴に行き、溺れかけた。海は怖い。自分は泳げない。そう心と身体に刻まれた。


二十歳くらいの頃。ビーチで遊んでいると、小学生くらいの男の子が、少し沖の方で溺れかけているのを発見。僕はすぐさま海に飛び込んで助けに行った。男の子を捕まえた時点で、自分は泳げないんだというの思い出し、一緒に溺れかけた。結局二人とも、その子の母親に助けられた。笑

そんな僕、今年で44歳。


先日、徳島に移住した友人夫婦を訪ねた。大工のトオルさんと、グラフィックデザイナーのリサさん。


サーフィン、川下り、山登り、アウトドアが大好きで、何でも自分でつくってしまうトオルさん。料理も上手。僕よりもずいぶん年上だけど、身体もムキムキで年齢を感じさせない若々しさ。


そんなトオルさんが七輪で焼いた秋刀魚を夕食に用意してくれ、めちゃくちゃ美味しい!なのに、少し胃腸の調子が悪く、半分以上残してしまった。


するとトオルさんが、「自分も30代までは胃腸が弱く、虚弱体質で、今みたいな感じじゃなかったんだよ」と、やさしい口調で話してくれた。


え!?全くそんなふうに見えないから驚いた。僕もトオルさんみたいになりたい!


胃腸の改善のために養生食を試したりしたみたいだけど、サーフィンを始めたことが一番大きかったらしい。

海に入ることで心がオープンになり、身体も浄化され、気がつけば胃腸も強くなり、身体もムキムキに。

とにかく好きで続けてるだけで、身体はどんどん元気に。

僕はそれを聞いてコレだ!と思った。


「トオルさん、明日、サーフィンやりましょう!」


「え?明日?笑、、、うーん、波あるかなぁ」

何よりトオルさんが語るサーフィンの魅力に心惹かれた。「何千キロも旅をしてきた波のエネルギーを受け取る・・・」。

海への恐怖心よりも好奇心がまさったのかもしれない。

翌朝。


トオルさんが朝食にホットケーキを焼いてくれた。それが絶品で、昨夜からの空腹が満たされた。


ヒヨって、やっぱりやめますとか言い出すかと思ったけど、なぜか迷いはなかった。

車で15分。四国の南側。太平洋。紀伊水道の影響であまり波がないスポットらしい。案の定、ほとんど波がなかった。


リサさんの提案で今回はシュノーケリングをすることに。


9月の後半。海水は少し冷たい。


初めて着たウェットスーツ。シュノーケリングも初めて。やり方を教わり、海へ入る。


小魚の群れ。美しい水中の景色に感動しつつも、足が付かない深さに達すると少しドキドキ。


どんどん沖へ行く。


大丈夫。身体は勝手に浮くんだ。泳げなくても溺れることはない。頭では分かっていても、呼吸が浅くなってることに気づく。


「身体の力を抜いて、波にゆだねてみて」とリサさん。


そう、身体がガチガチだった。波に抗おうと必死だった。


言う通りに試行錯誤してみると、徐々にコツが掴めてきた。


あ、いけるかも。

漠然とした不安を手放す第一歩は、小さな技術を自分で獲得することだったらしい。

1時間ほど経って陸に上がると、膝がガクガクと震えていた。

座って休憩していると、朝焼いたホットケーキをトオルさんが差し出してくれた。


あまりのおいしさに涙が出そうになった。

「また夏においで。」

サーフィンはできなかったけど、やるって決めた自分が少しだけ誇らしかった。

いつもの海が少し違って見えた。